不意に足を掴まれた。
海のど真ん中であるまじき事である。
人魚とやらがイタズラでもしてると言うのかと水中を見てみる。
しかし、それは見てはならない物だった。
今しがた見た人魚より余程の存在感、現実感がある。

『ニコル・・・・・!!!!』

アスランは顔面蒼白の状態で何とか自分を保とうとするも恐ろしすぎて声も出ない。
ニコルはアスランより一つ年下の後輩だったのだが去年、自動車事故で命を落とした。
しかもアスランを庇ったという事で人生最大のトラウマになっていたのだ。
彼の両親にそれを告げた時の事が忘れられない。
責められはしなかったが彼らの悲しむ顔がそれより辛かった。
それ以来日常生活の中でも夢の中でも、何度も何度も血溜まりの中にあるニコルの体と両親の顔が現れた。
目の前で確かに先刻までつながっていた体がバラバラの物になっている様を見て忘れようもなかった。
今でも思い出すものの、夢に出る回数は大分減ってきていた。
やっと立ち直りかけていたのに──

そのニコルが今こんな場所で出てきて自分を海に引きずり込もうとしている・・・・・・!?
説明はつかないが”ニコル”の物質的な重みに体が沈んでいく。
彼は楽しい所にでも行くのだと言うように笑っていた。
『ニコルを死なせたのは俺の責任・・・・それで気が済むと言うのならおとなしく従おう・・・・・・・・・・・・・・』
そう思って抵抗を止めて、ニコルは自分を恨んでいるのかなどと色々な事が頭を巡っていた。



・・などと感傷に浸っていたアスランだが息が苦しくなって結局必死に水を掻いた。
人間、痛みと苦しみにはそうそう勝てないものである。
勢いよく水面に上がると息を吸い込み、死に物狂いで泳ぎ出した。
「ニコル、成仏してくれ・・・!!」
そう言ってアスランは浜辺まで全力で逃げた。



「あれぇ〜さっきの人?人魚は見つかった?」
先程の少年がかき氷片手にまた話しかけてくる。
馬鹿にしたような口調だが今は腹を立てている余裕も無い。
「いや・・・・・、いや、そうじゃなくて、人魚はいたよ・・・確かに。・・・それより・・幽霊が・・・・・・」
アスランは錯乱状態で何を言っているのかいまいちわからない。
少年は「今度は幽霊だって?」と怪訝な顔をする。

「足を掴まれて・・・・ああ、跡が残ってる・・」
そう言ってアスランが足首を見せると流石にその少年も青ざめた。
「マジ・・・?」
少年は一目散に駆けていくと今度は連れに早く帰ろうとばかりに騒ぎ立てているようだった。
しかしあとの二人はやはり相手にしていない。

アスランは恐怖の為か濡れている為か、どうも体が冷えている事に気付く。
にわかに雲が太陽を隠してますます肌寒くなり、鏡を覗けば唇が紫色になっているんじゃないかと思う位寒く、震えてきた。
ディアッカとお爺さんに連絡もなしに悪いが先に旅館で休ませて貰おうと裸足のまま歩き出した。





「ねぇ、鱗触ってみてもいい?」
やけに嬉しそうに聞いてくるディアッカにイザークは仕方なく許可する。
するとディアッカは大きな尾びれを両手で表と裏から挟むようにしてその感触を確かめ、足元(?)の方の鱗を撫でてみた。
「オイ・・・なんか・・・・・・・・っ、変なトコロ触るんじゃない!!」
いきなり後頭部をバシッと叩かれてディアッカは何が何だかわからないと言った表情だ。
まさかこんなところで怒られるとは。
股間を触ったとか胸を触ったとかならまだしも、ヤラシイ事は何にもしていないと思っていたのに。
どうやら人魚は人間と器官の場所なども違うらしい。
そう言えば人魚のSEXって見た事無いな、とディアッカは思った。
そもそも股なんか無い。
下半身が魚なのだから・・・・・・・・・と、言う事は・・・・
必ず何処かに穴があるハズだとディアッカが角度を変えながら見ているとまた怒られた。

「ジロジロ見すぎだ貴様!」
イザークは気を悪くして海に滑り込むように逃げた。
「イザークごめん!一人にしないで〜」
浅瀬でディアッカが両手を振って叫んでいる。
本気なのか冗談なのかわからないがあまりに情けない様子にイザークは小さく噴き出してしまった。
「俺のとこまで来たら許してやるよ」
そう言うとひれを扇子を扇ぐように悠々と動かし、島から離れていく。
惚れた弱味か、イザークに言われるままにディアッカは波打ち際をバシャバシャとうるさい音を立てて走り、水が腰まで来ると肩まで
浸かって泳ぎ出した。

「・・・・・・遅い・・・・・・」
人魚のイザークは満足に泳げもしない人間を呆れて見ていた。
元々静かな海だが今日は波はとても緩やかでそれ程泳ぎ辛くは無い。
イザークは無駄に飛沫が上がる割にはろくに進んでいないじゃないかと思う。
しかしあくまで海の生き物から見た感想であって人間としてディアッカは泳ぎが苦手な訳ではなかった。
やっと追いついて見てみると島は遠く浜も数cm程度の線のように見えるだけだった。
海の真ん中で足もつかないとなると不安に思う。

「力尽きて溺れたら助けてくれよ?」
立ち泳ぎしながらディアッカは言うがイザークは「甘えるな」と一言。
本当に助けて貰えないかもしれないとディアッカは苦笑する。

「いいよ、こうやってれば楽だから」
ディアッカは仰向けになって浮く。
その周りを泳ぎながらイザークは退屈しのぎの提案をする。
「何が見たい?珊瑚ならそこらにあるぞ。それとも海底遺跡か?なんなら沈没船から取ってきた俺のコレクションでも?」
得意気に言うイザーク。
どうやら収集癖があるらしい。
意外だな、と思ってからふと考えた。
何かを集めるならそれを置く場所が必要である。

「所で人魚って家あるの?」
「いや、家と言うか、寝床だ。洞窟だけどな」
「水の中の?」
「そりゃそうだろ」
「じゃあ無理じゃない」
ディアッカは見てみたいと思いながらも断る。
「どうせ深く潜れないんだろ?その分じゃ他の所も無理そうだな。やっぱり人間は不自由──」
どうやら人魚と遊ぶには空気ボンベが必要なようだ。
ディアッカはこの計画の改善を願ったらやはり値段的に無理だろうと思う。
宿泊費と食費が一体どうやって絞り出されているのか予測付かない程なのだから仕方あるまい。

「まぁ俺はイザークがいればいいんだけど」
ディアッカは目を細めてイザークを見る。
「は?」
イザークは元々だろうが、少しキツイ口調で返す。
それに少し唇を尖らせる気分でディアッカは付け足した。
「だからイザークと一緒なら何処でも同じで楽しいよって」
「馬鹿か!人魚に会いに来たんだろ!俺じゃなくても・・」
そういうイザークの頬は赤い。
肌が白いのでそれがやけに目立って見えた。
指摘すれば海に潜って出て来てくれない気がするのでディアッカは言わないでおく。
何だか後にどう続けて良いのかわからないが良い雰囲気とも言えるのでディアッカはこのまま口説き落としてしまおうかと思った。
しかしそれは思いがけず例のイルカに邪魔をされるような形になった。
今まで何処にいたのかわからないが突然現れてイザークの傍まで来るとキューキューと鳴き声を上げた。

「何・・!」
途端にイザークの表情が変わる。

「どうした?」
ディアッカはイルカの言葉などわからないがイザークが顔色を変えた事で察する。
イザークは険しい表情でディアッカを見た。

「・・・ジャックが来た」
「ジャックって誰?」
ディアッカは訳がわからず聞き返した。








continue










***



今回の補足説明

何?
新キャラ?
いえいえオリキャラです。
そんな単純な名前のヤツいないし?
オリジナルは全て海の生物って言うのがまた・・;
しかしせめて何語の名前とかさ・・わかれば付けやすいんだけどね。
もう本当に・・・
自分ってギャグ人間なのか何なのか・・・・(ハンパ人間か)
そしてラブイチャ苦手;
なってませんかね?








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