『俺って変かも・・』


『そんな事無いよ』



君がそうなら俺も変じゃない


勿論あいつもね





今お姫様は王子様の夢を見てる・・・










御伽噺










「なぁ滝、俺どうしたらいい?やっぱ諦めた方がいいよな・・」
岳人が困ったような顔で訊いてくるもので、滝は本心ではそうしたくなかったが励ましてやった。
岳人は納得はしていなかったが一応思い通りの言葉を貰ったらしく少しだけ笑ってくれた。
滝はそれに応えながらも気持ちが沈むのを感じる。
現状は苦しい。
いっそ早く向こうへ行ってしまえば良いと思っているのかもしれない。



「忍足・・・一緒に練習・・いい?」
部活が始まり、岳人は自主的に準備運動をしている忍足の傍に行くと言った。

忍足と向日は少し前にダブルスという事で組まされた。
自然二人でいる時間が増えそれに比例して親しくなったのだが最近岳人は一般的でない思慕に気付いて自己嫌悪するようになった。
滝ですら口では否定しないが本当は気味悪がっているかもしれないと不安になる。
もし忍足に知れたら当事者なだけに余計に嫌がられるのではないかと恐れた。

「・・何言うてんの。俺らダブルスやねんし、当たり前やんか。何で急にそんなんなん?」
忍足は毎日練習しているのに今更、と岳人の態度を不思議に思う。
「別に・・」
「何かあったんちゃうん?教えてぇな」
”何でも聞いてやる、受け入れてやる”という寛容な態度を忍足はよくとった。
岳人が忍足に魅かれていったのはそれが一つの大きな要因に違いなかった。
忍足が目線を合わせようと屈んで岳人に顔を近付けていくと岳人は一歩引いた。
それを見て忍足は苦笑しながら言う。
「何?俺嫌われてる?ショックやなァ・・これからやっていけるんかいな・・」
言葉は冗談のようだが本当に悲しいとも取れる忍足の表情に岳人は違った意味で自分を嫌悪した。
「違っ・・全然・・・嫌いな訳ないし!」
必死で否定しながら顔が赤くなっていくのを感じて岳人は慌てて誰もいない方向を向いた。
忍足がどんな顔をしているのか気になって仕方がなかったがこんな顔は見せられない。
『嫌われて怖いのは俺じゃん・・』
そう思うと寂しい気持ちになってこの時だけでも忘れようとラケットを力一杯振った。



「お疲れ様でした」
「お疲れ」
鳳が部室から出てくるのと擦れ違い、中に入ると皆さっさと帰ってしまったらしく滝一人がいるのみだった。
「滝・・何してんだ?」
特にする事もなさそうで支度も整えたようなのに部室から出る気配のない滝に尋ねる。
「岳人こそ珍しいよ」
滝は椅子に座って背にに凭れている。
「疲れた・・」
「ああ、俺も」
岳人は夕陽に部室が染まっているのを見て眠気を感じた。
「俺もちょっと休む」
滝が休憩してから帰るものと思った岳人は滝の横に座った。
ふぅと息をついて腕を支えに背を曲げると俯いたまま岳人はあまり動かなくなった。

「・・・・・・・・今日はどうだった・・?」
あまり出したい話題でなかったが岳人の気持ちを察して訊く。
「・・・・・・・・いつも通り・・・・・・・忍足は優しかったよ・・。いい奴だよな・・」
親切だから好きと言う訳ではない。
岳人はそう言って項垂れるが滝が思い出してみる限り忍足は決して誰にでも優しい人間などではないと思う。
最初はあまり良い感じを受けなかった。
どこか高圧的で、常に余裕で自分の能力に自信を持っているように思えた。
岳人は今必死過ぎて思い出せないのか、と少し苛立つ。
しかし二人が互いを好いているのは見る限り確実だ。
忍足から直接聞いた訳ではないが他の人間との明らかに違う接し方。
そして好きでなければ岳人をフォローしていられないだろうと思う。
忍足が他人にどうであれ岳人だけは大切にするだろうとわかっているので文句も言えない。
何より岳人が望んでいる。
岳人の為ならいくらでも協力すると思っていたが今回は複雑だ。
なので少しだけ邪魔をしてやろうと思った。
忍足を試してやるのだ。

「岳人?」
顔を覗き込むと岳人は返事も出来ない位うとうとしていた。
「岳人・・凭れてもいいよ?」
滝が小さくそう言うと岳人は反射的に言った通りに動いた。
温めてやればもっと深く眠るだろうと踏んで静かに腕を回した。
案の定寝息が聞こえ始めて滝はのどで笑った。
忍足は監督に話があるとかで残ってるから遅いだろう。
『馬鹿だね・・こんな所見られたらどうするの?』
滝はそう思ったが口には出さなかった。
むしろこれを見て忍足が岳人から離れれば良いと思った。
噂をすれば──自分の思惑通りとも思えるタイミングで忍足は部室に入ってきた。
そして自分達に気付いて硬直するのを笑い出しそうになりながら見ていた。

「な・・なんやお前ら・・・むっちゃ仲いいやん・・」
明らかに動揺している。
それを隠そうとして失敗したのを本人もわかっているに違いない。
滝は更に忍足を追い詰めてやる事にした。

「そうだよ」

忍足はハッキリし過ぎている肯定に驚く。
流石に滝がわざとそうしているのだと気付いた。



「羨ましい?」

得意気に言うと忍足は僅かに肩を竦ませた。
それ以上喋る気がないのか、それとも声も出せないのか、忍足はわざと笑みを作ってそれだけで済ました。
凄く無理をしているのがわかって少し可哀相になる。

嘘──
本当は羨ましいのは俺・・
意地悪しちゃったよ。
無駄に嫌な事を・・
でも安心していいよ。
まだ言ってあげないけどね。
俺の岳人を取るんだから・・
滝は少し鼻がつんとするのを感じながら思った。
俺は傍にいるだけでと思ったのに、何故二人ともそんなに貪欲なのだろう?
滝は岳人の顔を覗き込んだ。

「じゃ・・俺帰るわ」
目を合わせてこない忍足を窺い見て彼がこちらを見たいのか見たくないのか判断つかない複雑な気持ちなんだと滝は想像した。
背の高い後姿を見ながら滝は心の中で告げる。



『今岳人は忍足の夢を見てる・・・』



暫く途惑った顔ばかりだったのに今は穏やかで微笑んでいるようにすら見えるから、きっと未来を見ているのだ。
それを思うととても悲しくて、妬ける。
最後の抵抗に、岳人の頬に軽く触れた。

手に入れたらさ・・
俺を笑っていいよ。
自分の物だと思い込んでいた馬鹿な奴ってね。
だから岳人、今だけナイトでいさせてね・・





昔知った御伽噺は


騎士は姫を守り


王子と姫は結婚するというお話










END















あとがき

ついに(?)滝岳を・・!
岳人受制覇目指して頑張るぜ!!
何か色々ニセモノくささが漂ってます・・
滝全くわからんし。
んで姫ってアンタ・・
いい加減にしてくれ。
王子ってのもイマイチですね。
挙句騎士とか言ってるよ・・(乾)
しかし何故か忍足がいじめられっこ。
本編ではいじめっこなのにね?
・・岳人だけが弱みって事で!!!(夢見がちな・・)

ちなみに挿絵らしき物はこちら
イラストの所にも普通にありますが。
絵から話が出来るパターンが多いんです・・
文字だけの方が美しいイメージを作れると思うので別々のページにしています;

2003/10/28










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