Please give the right of a hug






忍足は岳人を見つめる。
椅子に逆向きに座って背凭れの頂上に肘を乗せ、その上に顎を置いて延々と見つめている。
椅子をそっちに向けている訳ではなく目だけ向けているのだ。
跡部と宍戸はそれを不気味そうに見ていた。
話に入りたいのならさっさと入れば良い物を少し離れて見ている奴の気が知れない。
そう思うが勧めてやる程親切ではないと思って黙っている。

慈郎と話していた岳人だがだんだん眠たげになってきた慈郎に呆れて一瞬こちらを向いた。
当然忍足の視線に気付く。
「何だよ侑士?」
「いや・・特に言いたい事はあらへんよ」
視線を戻すと慈郎は床に手を着こうとしている途中だった。
「慈郎、そんなトコに寝転がるなよ!」
岳人は慈郎の世話を焼いている。
肩を貸して椅子に座らせてやっていた。
慈郎は一言も喋らないまま寝る体勢を整えて寝息を立て始めた。

『まぁええけどな』
忍足は嫉妬を認めたくないように思った。
まだ慈郎なら許せそうなものだ。
もし跡部や日吉が本気で岳人に手を出そうとしてきたら全力で追い払うつもりだ。

『でもそんな事ある訳無いわ』

忍足は今まで実際にホモセクシュアルは見た事が無い。
皆マトモだ。
だが自分は違うかもしれないとは思う。
自分がそのホモなのではないか。
ただの友達やパートナーとしてはあまりに岳人の事を考える時間が多かった。
今まで家に帰ってしまえば友達の事など特に思い出さなかった。
一人である事に苦痛の欠片も無かった。
それが岳人と会ってからは変わった。
家に帰っても岳人の事を思い出した。
風呂など一応一日の汗を流して湯舟に浸かってぼんやりしているだけの物だったがやはり岳人の事を考えてしまい、気付くと
思ったより時間が経ってしまっている。
毎日という程会っているのに足りない気がする。
これは恋に他ならないのだろうと認めざるを得なかった。
自分だって今まで普通と思ってきたのだから同性に惹かれている事を認めたくはなかったがどんな理由を付けても誤魔化せない。
何度も岳人に話そうと思った。

『俺、岳人が好きやねん・・・・・・岳人は?』

『こんなんおかしいかもしらんけど・・』

『友達とかやなくて・・・』

何度もシュミレーションが頭の中で繰り返された。
しかしそれは全くの無駄に終わる。
言いたい事が言えずにストレスだけが蓄積されていく。
もう限界と今までも思った時があった。
しかし出来てしまう我慢。
やはり軽蔑されるのが怖かったので踏みとどまった。
そしてまた訪れる”多分”限界・・



「抱き締めてええ?」
なるべく普通の発言になるようにさり気なさを心がけて言った。
しかし相手はやはり驚いた顔をした。
『女子はよく抱き合ったりして遊んで(?)いるよな。・・という事は男同士でもするって事か?』
岳人は暫く考え込むような仕種を続けたが忍足に向き直る。

「いいけど、何でだよ?」
「それは・・・・・」
岳人が訝しげな顔をしている。
拙いと思って必死に無難な返答を考えた。
「それはやな・・最近心がささくれてきとるから癒しが欲しいんや。触れ合いが心を癒すねんで」
何とか誤魔化せるだろうかと忍足は岳人の様子を見たがまだ首を傾げている。
「ささくれるってどういう意味だよ?」
「いや・・だから・・・簡単に言うとグレ気味っていうかやな・・」
岳人はそれで納得したらしく、首を縦に振った。
「ほんなら・・・いくで?」
自分で言ってみたもののいざとなると緊張する。
岳人も改まって変なの、と言いたげだ。
それを振り切るように思い切って岳人を両腕に収めた。
岳人の体が小さい為に覆いかぶさるような感じになる。
狭い肩に顎を押し付けると耳の横にはさらさらした髪が触れるのを感じた。
鼻孔に独特の匂いが満ちていく。
香水などでは決してなく、シャンプーやリンスの匂いだけというのでもなく、岳人の匂いに違いない。
肺の奥まで吸い込むと堪らなくなって腕に力を込めて締め付けた。

「侑士・・!?止めろ、いてぇよっ!!」
岳人が暴れ出したので忍足は腕を解いた。
「苦しいじゃねぇか馬鹿!」
「すまん・・岳人」
岳人は殆ど変化しない忍足の顔が少し寂しげなのを見て黙る。
怒る代わりに何故侑士が締め付けるような真似をしたのかと考えた。
「岳人・・」
「何だよ」
少しムッとした態度を表す。
忍足は少し迷ってから口を開いた。
「もう強うせんから・・時々・・・・・・・・・ええ・・・・・・・?」





「オイ・・・何だよアレは・・・」
跡部が鬱陶しそうに言った。
「俺が聞きてぇよ」
宍戸は鳳にげんなりした顔を向けるが鳳は苦笑いをするだけだった。
「まぁ、いいじゃん仲良しでー」
慈郎が机の上に寝転がりながら言う。
「降りろ。・・降ろせ、樺地。いやそれよりあいつらを引き離せ」
跡部が忍足と岳人を指差す。
樺地は慈郎を机から退かせてから忍足達の方に向かう。



その間忍足は椅子に座っていた。
そしてその上に岳人が乗って忍足は岳人の腹の前に手を組んでいるという状態だった。
丁度良い位置なので忍足は岳人の頭の上に顎を乗せる格好で落ち着いている。
「・・・めっちゃ癒されるわ〜・・」
忍足は至福を味わっていた。
「仕方ねぇなぁ侑士は」
岳人は寒くなり始めた頃という事もあって別段嫌がりもせずに忍足に付き合って大人しく座っている。
しかし夏になったら絶対離れろって言うな、と考えた。
「?!」
急に頭を押し上げられたので退かせて見ると岳人は意地悪そうな笑みを作って見上げてくる。
「・・もう駄目って言ったらどうする?」
「・・・癒しが無くなるから俺犯罪犯してしまうわ」
岳人が本当にそう思っているのかわからないが忍足はあえて冗談ぽく返した。
顔の位置を岳人の肩の上に替えて「そんな事にならへんよな・・・?」と呟く。
「わかんねーよ。高校だってわかれるかもしんねーし」
あくまで岳人は素っ気無い。
「そんなん・・会お思たらいつでも会えるやんか。その気になれば」
「まーな」
そう言って少しの距離も詰められないようになる事。
幼馴染に会わなくなるように。
まるで抱き締められる相手が自分しかいないかのような頼られ様に岳人はくすぐったい気持ちになった。
馬鹿馬鹿しいが、恋愛をしているような感じがする。
忍足は力の加減を気を付けて少しだけ力を強めた。

『だって俺ら友達やもん・・。この為に恋人になってとは言わないねんから───』
岳人の髪に顔を押し付けて思う。



「いいじゃん〜〜仲良しはさぁ!」
言われた通り忍足達を引き離しに行こうとする樺地に慈郎が木登りの体勢で取り付いて微力ながら阻む。
「慈郎!邪魔すんな!!」
跡部が慈郎を樺地から離そうとする。
その様子はいつもの跡部と違いむきになっているのは気のせいか。
案外ホモセクシュアルは多いのかもしれない。










END








***



後書き

自分の望みです。(オイ)
私も誰か抱き締めさせてくれんと犯罪犯すよいつかー
恋人じゃなくていいからー
友達で良いから・・・・
ってそんなんさせてって言えないんだよなまた・・・
仕方なくシロタン(ぬいぐるみ)を抱き締めて癒しタイム。 

手触り最高ッス・・
それにしても顎乗せ3回も出しやがりましたよ。
なんせ「顎乗せ隊」作りたいとか思ってる人間ですから。
ちなみに”可愛いものには顎を乗せたくなる”とかいうのです。
しかし結構マトモな話にするつもりだったのでギャグっぽいよな;
何故・・・・・・・・凹










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