Meaningless chances






聞きなれたインターフォンの音が聞こえて岳人は玄関に向かった。
「侑士おはよう」
軽く挨拶するが侑士の反応がやたらと悪い。
「何だよ侑士・・何か機嫌悪いのかよ・・」
自分のせいかと勘繰って岳人は眉を顰めた。
「・・ちゃうねん・・・どうやら風邪引いたみたいで頭がボーっとすんねんや・・。熱もあるようやし・・」
そう言うと岳人は「何で休まねーんだよ!!」と騒ぎ出した。
侑士は虚ろな目で半ば無理矢理口を動かす。
「アカン・・俺は休まれへんのや・・」
岳人は勉強をきっちりやろうという心意気かテニスの練習を一日も欠かしたくない為だと想像して侑士を尊敬する。
そこで少し声を和らげた。
「一日休んで明日頑張ればいいじゃん」
自分の頭より高い位置にある肩を軽く叩いて言うが侑士は取り合わず、「いや・・そういう問題じゃないねんて・・」と呟いた。
そのままいかにも体が重いといった動作で学校へ向かおうとする。
「おい侑士!」
岳人は侑士の腕を掴んで家に引き戻そうとした。
「わかってえな・・・俺は休まんのや・・」
岳人は懸命に学校と逆の方向へ侑士を引っ張っている。
いくら身長差が大きいとはいえ自分で思うより重症の侑士はバランスを崩して倒れかけた。
岳人が慌てて侑士を横から支えた。
侑士が一瞬遠のいた意識を咄嗟に取り戻さなければそのまま倒れていたと思われるような状態だった。
岳人はいよいよ止めるべきだと強く思う。
「そんなんじゃ事故っちまうぜ!俺まで巻き込む気なのか!?」
そこまで言われてると侑士もさすがに休む事にした。
「家まで送るぜ?」
「いや・・そんなんええよ・・・岳人遅刻してしまうで・・」
確かにそうだがフラフラしている侑士を一人で道を歩かせるなんて一日心配で仕方ないと思う。
「じゃあ俺が帰るまで俺んちで寝とけよ」
瞬間”えっ!!?”という風なリアクションで侑士は覚醒した。
『と言う事は・・?岳人のベッドで寝れるって事か!?寝てええんか?ええんやな!!!』
「侑士・・・早く家上がれば・・?」
岳人は様子のおかしな侑士を促した。
「あ・・あぁ・・悪いな何か・・・」
侑士は少々挙動不審気味に岳人の後をついて行った。
「あ、制服どうする?しわになっちまうよな」
布団の上に放り投げたパジャマをのけてシーツを整えながら岳人が訊ねるが侑士の意識は岳人のパジャマに集中されていた。
こんな型でこんな色でこんな柄だと言う事をしっかり記憶していく。
思考能力が低下しているのかと思った岳人は侑士の前に行くと制服を脱がし始めた。
侑士はそんな岳人の行動に焦る。
「え・・・ええって岳人!自分で出来るで。・・・って言うか脱いでも着るもんが無いやろ?このままでええわ」
「でもしわになっちゃうじゃねぇか」
「保健室で休んでると思えばええわ。替えのズボンもシャツも洗濯済みやし・・」
岳人はそこでやっと納得すると侑士をベッドに横になるように勧めた。
寝転がると岳人が布団をかけてくれる。
侑士は此処は天国やないやろうか、という気分になった。
「じゃあ行ってくるぜ。お腹空いたらレトルトのおかゆもあるから食えよ」
「ああ・・おおきに・・。あ・・岳人・・・知らん人について行ったらアカンで。あと知ってるやつでも危ない思たらすぐ逃げるんやで〜・・」
「侑士!もう中学生なんだぜ!?俺がそんな無防備に見えるかよ?」
最後に舐めるなよ、とばかりに「へっ」と格好をつけて岳人は笑った。
しかしそんな態度を見ても侑士はやはり安心出来なかった。
『いや〜それでもやっぱ可愛いで・・』
ドアが閉められる音を聞くと侑士は目をつぶった。
すぐに自分の呼吸を意識する。
『風邪引いてる時ってグルグル回ったりして変な夢見るもんやけど何かいい夢見れそうやなぁ・・』





丁度会った担任に忍足の欠席を報告して岳人は教室に向かった。
自分の席に座ると一列越しの席の慈郎が珍しく起き出した。
「岳人・・?おはよ〜・・・あれ〜侑士はどうしたの?いっつもイッショじゃん?」
「慈郎、珍しいな。おはよう。侑士は風邪引いて休み」
途端慈郎は勢い良く立ち上がった。
「えぇ〜っマジ!!?いぇいっ!」
「慈郎・・?”いぇい”・・・・?」
人が風邪を引いたと言うのにと岳人は不審な目で見上げた。
「やー忍足やっぱ天才だなー ってさ」
慈郎が内心「アブネー」と思いつつも平然と誤魔化すと岳人は「ああ!」と手を打ち、あっさり納得してしまった。

1時間目の授業が始まる。
岳人は教師が来てからゴソゴソと机の中を探り始めた。
「あっ、ヤベ!教科書持ってきてねぇ!」
小さく呟いたのに聞こえていたのか慈郎と跡部、その他数人(男)がいっせいに岳人の方を向き、「見せてやる」と言った。
あんまり同時だったので岳人が唖然としていると跡部が周囲を見回して威嚇する。
「俺が見せてやるって言ってんだ。文句ねぇよな?」
岳人は「いや別に誰でも・・」と言うと跡部は怒り出し、慈郎は「俺寝てるから貸してあげるー」と宣言し、所々から声が上がった。
もう誰か何を言っているのかわからない状態だ。
渦中のど真ん中にも関わらず取り残された岳人が現実逃避していると教師がお決まりの台詞「静かにしろ」で大体の騒ぎを鎮めた。
「向日の席は端、列は男女交互。どういう事かわかるな?」
跡部が舌打ちしたのが聞こえ、慈郎が机に突っ伏すのが見えた。
「悪い、見せてな」
岳人は隣の女子と机をくっ付けた。
その女子は内心踊り出したい位だったが表に出すと後でどうなるかわからないので平静を装いつつ教科書を真ん中に置いた。





授業は終わっていつも通りに部活の時間が来る。
担任の都合でHRが無かったのでだらだらと部室に向かったが時間はまだ早いらしく誰も来ていない。
侑士がいないのでダブルスの練習が出来なくてつまらないと思いつつ着替えていると日吉が入ってきた。
「よ」
「・・向日先輩、こんにちは」
日吉ってやっぱり来るの早いんだなぁと想像していた事が現実だとわかった。
しかし日吉が来てもあまり意味が無いと思って着替えを続ける。
「・・・向日先輩今日は早いんですね?」
「あ、まぁな。HRがなくなったんだよ。でもあんま意味ねぇよなぁ〜帰れる訳じゃないんだし。ってかネット張んなきゃなんねーだろ。
面倒くせぇよな。もっと遅くに来れば良かったー」
「でもネット張りなんて一年生がやる事でしょう?」
「うーん、でも早くやりたいじゃん」
「じゃあ俺がやりますから向日先輩は素振りでもしていて下さい」
「いや、一人じゃやり難いだろ。一緒にやろうぜ」
「でも・・」
岳人は日吉をネットが入っている篭の所まで引っ張って行くと片方の端を持つように言った。
日吉はそれ以上は言わずに仕方なくその通りにするが岳人が近くにいる事が嬉しいと感じる。
岳人の方に重心が寄らないようにと思って日吉は少し屈みながら運んでいく。
ふと岳人が自分の顔を見ている事に気付いてドキッとした。
横目で窺い見ると岳人が笑いかけてくる。
「日吉・・いつもは全然話しかけてくれないのに・・・何か嬉しいな」
岳人が照れ笑いをするのを見ると日吉は少し赤くなって目を反らした。
「それは・・」
日吉は口の中でだけ響く位の声で言った。
『忍足先輩がガードしまくってるからです』



テニス部の部活も終わり、岳人は侑士がいないのでたまには一人でも仕方ないかと思って鞄を肩にかけて部室を出ようとすると宍戸と
鳳が声をかけてきた。
「岳人、お前今日一人かよ。激ダサだな。よし、一緒に帰ってやるよ。な、長太郎」
「はい、向日先輩一緒に帰りましょうよ」
「先輩・・俺も良いですか・・?」
日吉が遅れまいと加わりそれもいいかな、と思っていると跡部が「俺が帰る時間まで待っとけ」と言い放った。
「何だよ跡部。部長の権限か何か知らないけど何で部活以外の事でまで言う事聞かなきゃなんねぇんだよー」
岳人が言ったのを最初に3年の者は表立って反論し2年の者はそうだそうだと心の中で激しく相槌を打っていた。
跡部は言い合いをしている間に仕事を片付け、樺地を操って邪魔をさせた為皆結局跡部を待つ事になってしまい、揃って部室を出た。
そこへ丁度と言った風に慈郎がやってくる。
「岳人ー帰ろ〜・・って皆一緒なの・・・?」
予想していた事なのだが慈郎は残念そうに言う。
「部活サボって寝てたヤツが文句言うな」
跡部が苛々しながら言う。
そして慈郎も加わりレギュラーが揃ってゾロゾロと歩いていく。
ガードレールが無ければ道を占領しそうな勢いで全員が岳人の横を取ろうと争っていた。
「鳳、脇を固めろ」
「はいっ」

宍戸と鳳はこそこそと話し合っている。
「がくとぉ〜〜〜〜眠い〜〜〜〜〜〜」
ここぞとばかりに後ろから腰にしがみ付く慈郎にまたも便利アイテム樺地で引っぺがそうとする跡部。
ケタ外れの力で引っ張るものですでに慈郎だけでなく岳人まで地面から離れていた。
それを必死に押さえる日吉。
物凄い画が出来上がっていた。
そしてそれぞれの分岐点では言い争いが起こる。
「おい・・・跡部の家ってそっちなんじゃねぇのかよ?」
「あーん?俺は間違いなくこっち方向だぜ?(別荘が)」
「馬鹿言うんじゃねぇ!絶対こっちだった!!」
「日吉、家遠いんだろ?駅はあっちなんじゃないか」
「最近二駅歩いてるんだ。悪いか?」
「ね〜〜む〜〜〜〜い!」
「・・・・」
部活でめいっぱい動いた後に更に無駄に力を使い、くたびれてきた頃岳人の家に着いた。
「じゃ〜俺家入るぜ?お前らこんなとこまで来てどーすんのか知んないけどさ」
「家に帰るに決まってんだろ」
「俺は一つ先の駅からは電車に乗りますよ」
「寝る・・」
「ちょ・・芥川先輩、俺に寄りかからないで下さいよ」
「送ってやったんだから茶でも入れろ」
「・・・・・・」
岳人はさっさと玄関に向かおうとするが再び跡部の自分勝手発言が出た。
「何ぃ〜勝手についてきた癖に茶ぁ入れろ!!?」
「何だ茶の入れ方もわかんねぇのかぁ?脳みそまで跳ねて馬鹿になったのか?」
岳人以外の全員が本当にこの人は岳人の事を好きなのかと疑う中岳人が本格的にキレようとした所で不意にドアが開いた。
全員の視線がそちらに向く。
「何や騒がしいなぁ・・」
そう言って出てきたのは忍足侑士。
「侑士!もう大丈夫なのか?熱下がったか!?」
岳人が侑士に駆け寄って抱き付くと侑士は岳人の頭を撫でる。
「おう。随分調子よぉなったわ。岳人のおかげやで。ほらな」
そう言って事もあろうに額を引っ付けた。
現実にこんな事をやる馬鹿がいるのかと言うシーンを目の前で見せられて一斉に後ろから重い溜息が吐かれた。
岳人は驚いて振り返る。
皆一様に項垂れていた。
『これだからバカップルにはついて行けない・・』
そう思っているとは想像も付かず岳人は「疲れたんならちょっと休んで行くか?」と気を使ってみた。
しかし岳人が自分の方を向いていないのをいい事に侑士は「さっさと帰れや!」というデスチャーで悪態をつきまくっていた。
やはり割り込めないと改めて思い知らされたのか皆さっさと帰る事にしたらしい。
跡部が尚食い下がるならやはり自分達も行くしかないだろうと思っていた者も散っていった。
「じゃーな」
岳人が見送る後ろで侑士は黙って手を振っていた。
「何だったんだろうなぁアイツら・・やっぱ家俺より近くだったんじゃん?引き返して行ってるぜ」
氷帝レギュラーメンバーでおそらくこの時笑っているのは侑士一人だった。
「ホンマはそこまでの仲やないんやけどこの事でもう手遅れと思ってもろたら儲けもんやでなぁ」
岳人は侑士の独り言に首を傾げた。

「昨日はホンマ助かったわー」
「一日で治ってよかったじゃん」
「そうやなぁ。無茶苦茶心配しとったけども逆に優位につけたしなぁ」
「優位って何の話なんだ?」
「いや〜・・岳人は気にせんでええねん」
「どういう意味だよ!」
話をしているうちに学校に着き、いつものように二人で教室に入ると何処からともなく溜息が漏れてきた。
「何なんだよそりゃ!暗いぜこのクラス」
岳人が遠慮もせずに言った言葉に反応した者を見て侑士は少しばかり気の毒に思う。
『ソレちょっとキツイわー。まぁ俺の事やないからええけども。しかし皆無駄な努力やで俺のいない間に岳人の気を引こうなんてなぁ』
侑士はそう思って岳人のすぐ後ろの席に座った。








END










心の中(?)では日岳メインだったんですわ。
しかし氷帝なんだからネットなんて最初から張ってあるかちょっとした操作で簡単に出来そうな感じだなぁ;
MY設定で慈郎と跡部は岳人と同じクラス。
いや跡部・・微妙かな・・・(汗)
侑士は別のクラスと思うのですが話上同じクラスと言う事にしました。
とりあえずキャラを誤解していると思われたくないのでいっちょオフィシャルでノーマルな岳人達を書いてみようと思ったんですが
そうすると何にも面白くないので止めました;
で・・でもね・・・
岳人は受けたりなんかしない極めてノーマルでむしろ攻で悪くすれば鬼畜位のイキオイの子だと思っとるんです・・
侑士は侑士で甘い言葉なんか絶対口にしないビターな性格(?)だと思ってます。

これからも書くのは嘘も甚だしい忍岳です・・とだけ弁解しときます・・いや↑のも嘘です・・(涙)
腐れ乙女フィルター越しのバカップル忍岳・・・になるかどうか・・
個人的には性格の乙女化は避けられないとしても口調だけは可愛くなり過ぎないように気を付けようと思ってるんですが・・
どうなる事やら・・



***



10月15日はどうやら忍足侑士の誕生日らしい・・
そんな情報をおぼろげながら入手しました。
何となく書いてみた台詞のみの・・何て言うのか・・まぁいいや。



向日「侑士、もうちょっとで誕生日だよな」
忍足「なんや岳人、もしかしてプレゼントでもくれるんか?」

向日「俺の誕生日にも貰ったしな。でも何がいいかわかんねぇし、侑士が決めろよ」

忍足「そんな事言ってもなぁ・・岳人お金持ってんかいな」

向日「あっ、こづかいオヤツ買うのに使っちまったぜ!」

忍足「そうやろー。ほぼ毎日チョコやらジュースやら買ってるからなぁ。あと通販で水戸から納豆を取り寄せたり・・」

向日「じゃあバイトする!」

忍足「あっ岳・・!・・・行ってしもた・・。しかしバイトって校則で禁止されてるんやけど・・」



無意味に終了・・
氷帝ってバイト禁止とかあるんかなぁ?
うちの学校は多分あったと思うって言うか中学じゃ思い付きもしなかったか?
高校ではとりあえずあったよ。
一応私立だし・・まぁいっか。









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