ある日部活の風景















「行くぜ侑士」
岳人は後ろにいる忍足を見た。
「頼りにしてくれてええで岳人」
忍足は無造作にラケットを持ちながらもどんな球も後ろに通さないといった雰囲気で立っていた。
「侑士ってやっぱり頼もしいな!」
岳人は堂々として見えた恋人の姿に頬を僅かに染めて言った。
それに忍足は彼なりの最高の笑顔で応える。
「よっしゃ、軽く運動しよか」



チッ・・・

舌打ちが所々から聞こえてくる。

『そんなの逆光効果に決まってるぜ!』
『俺の方が頼りがいあるに決まってんだろーが』
『まーたイチャついてんのかよかよウゼー』
『よく飽きないよね〜・・』
『マジ殴りてぇ!』
『あんな丸めがねの何処が良いんだ先輩・・!』

今から試合相手になる者からレギュラーから残り見学部員まで何人もの舌打ちだ。
様々な意味が含まれるが悪口は全て忍足に向けての物だった。
と言うのも岳人に少ながらず好意を抱く者が氷帝テニス部には溢れかえっていたからだった。
まだ忍足に可愛らしい面があればそこまでは思われなかったろうが忍足に可愛げという物は全く無かった。
舌打ちが聞こえていないにしても悪意は感じているだろうに全く動じていないのが証拠だ。
岳人が向こうを向いていればまるで縄張りを守る獣の如しだ。
今日も岳人の後ろで視線で威嚇しまくっていた。



忍足と向日は大げさな会話をしているがこれは単に氷帝内での打ち合いである。
そして此処は氷帝学園内で、毎日行われている事で、他校との練習試合ですらないのだ。
しかしそんな事は彼らには関係の無い事だ。
そして忍足向日ペアと未だレギュラー入りを果たせない名も無い部員ペアのダブルスが始まった。
ただでさえ勝つ可能性は無いに等しいのだが──

「飛ばして行くぜ!」
岳人が地を蹴り宙を舞った。
毎度の事なのに思わず見上げてしまう前衛。
そして途中太陽の光が刺さったかのように目を細めてしまう。
『うっ・・・』
実際には声は出ていないかもしれないが呻いた気がする。
大きく捲れたシャツから肌が覗いて相手の気が反らされる───しかしその点は特に戦略ではないのだが。
実質此処まで来たのは好き勝手跳ねまくる岳人を完璧にフォローする忍足の活躍だけでない。
氷帝D1の座を取ったのもそれをキープし続けているのもきっちり半分は岳人の、”ある意味実力”だったのだ。
そんな訳で今日も忍足・向日ペアは勝利したのだった。



「バテた────っ・・・」
炎天下で跳ね回っていた岳人は時々よろけながら歩いていた。

「樺地」
「ウス」
指を鳴らす音と共に発せられた跡部の一声で樺地が動き、岳人をベンチまで運んで行った。
「俺でも余裕やのに」
忍足は樺地に嫉妬して良いのか跡部に嫉妬して良いのかわからず不満そうな口調で言いながらついて行く。
樺地が跡部の横に岳人を降ろす。
「ホラ、特別サービスだ」
跡部が太陽に反射してやけに白いタオルを岳人の頭の上に落とす。
特別などと言いながら珍しい事ではない。
「余計な事すんなや跡部」
跡部のした事よりも礼を言った岳人の顔の方が原因で忍足は不機嫌だ。
そんな事は気にも留めず跡部は岳人に一瞬素直な笑みを見せてまた不敵な態度に戻って腕を組んだ。
「俺の選んだ物だ。有難く使え。返さなくていいぞ」
忍足を無視して岳人に向かって言う跡部。
彼の言い分はいつも岳人を独り占めしてるのだからそれ位可哀相でも何でもないといった所だった。

「洗濯して返品や」
「何だ忍足。俺が岳人にやるって言ってんだ。お前は関係ねぇだろうが」
忍足の嫌味に跡部が返して険悪なムードになるが岳人は気付かず「のどが渇いた」と言い出した。
「ホントだな」
隣のベンチに座っていた宍戸も同調した。

「俺が買ってきますよ」
鳳が好感度の高い爽やかな笑顔で素早く進み出た。
「おっ、わりぃな。頼む、鳳」
「いつものな」
「はい!」
鳳の笑顔がますます輝いた。

「尾が見えるようや・・」
忍足は鳳を見て呟く。
鳳は宍戸にやたらと懐いているが岳人もかなり好きな類の先輩のようだ。
しかし忍足がさほど敵として見ていないのは彼の本命を知っているからだった。



「鳳、そんなにいっぱい持ったら零すだろう。向日先輩のは俺が持つ」
「日吉・・二人分位大丈夫だろ?」
「自分のも買うんじゃないのか?」
「俺は・・・宍戸さんと同じのを飲むから」
鳳がへらりと言うと、途端日吉は凄い形相に変化し顔を突き合わせてきた。
「お前宍戸先輩なら宍戸先輩一本に絞れよ。俺は向日先輩だけが・・だけが・・・!!」
「わかったわかった」
日吉の気迫に圧されて宍戸の分のみで納得した鳳だった。

日吉は自動販売機の前にいざ立ってはたと止まった。
『向日先輩の好きな飲み物って何だ・・・?』
鳳をちらっと見ると何の迷いも無くボタンを押している。
「・・・・・・・・・おい・・・・・・向日先輩って何が好きか知ってるか?」
「ん?好きな人の好きな物も知らないのか?そんなんじゃ上手くいかないぞ。まぁ日吉って疎そうだからなぁ・・と言うより向日先輩は
忍足先輩と付き合ってるんだし・・・・・・・日吉・・・?」
鳳が気付いた時には日吉は自動販売機の前から消えていた。

「侑士ー俺今暑いんだよ〜」
日吉が戻ってくると忍足が人目も憚らず岳人を膝に乗せて抱きかかえていた。
「ええやんか。俺らの熱も冷めんようにこうしてんねん」
そう言って忍足はますます岳人に密着した。
ふぅ・・・とかはぁ・・とかいうわざとらしい溜息が聞こえるのは運動後だからという訳ではなさそうだ。

「眠〜・・枕貸して〜・・・」
慈郎がフラフラと寄ってきて岳人の膝に倒れこんだ。
「おい!俺を枕代わりにするな!暑いって言ってんだろ!!」
「ええがな。仲良しさんで」
忍足は慈郎には甘かった。
どうやら小さい生物には弱いらしい。
そんな様子はもう日吉には見えておらず、頭の中は忍足と岳人の二人の映像のみだった。

『そうだ・・・・・・・向日先輩は偶然忍足(呼び捨て)とダブルスなだけじゃなく登下校も休み時間も一緒にいるし名前はお互い
呼び捨てだし・・・(俺の事だって名前で呼んでくれれば良いのに)・・・・・鴛鴦夫婦がいるという耳に掠った噂は向日先輩達の
事だったんだ・・・・!!』

あっ、日吉!俺の分お前が買いに行ってくれたんじゃなかったのか?何も持ってないじゃん」
日吉が激しい苦悩の中でのた打ち回っているその時無情にも岳人が日吉に気付いて声をかけた。
「・・・・・すみません・・・・」
日吉は下克上などという言葉など脳細胞のたった一つも記憶していない位の項垂れ様だ。
『まさかあれだけイチャついてるのに知らなかったのか・・・?』
鳳は宍戸にジュースを渡しながら思った。

「しゃあないなぁ・・俺と一緒に買いに行こや岳人」
日吉の苦しみを知ってか知らずか忍足は完全に眠ってしまった慈郎を静かに退かせると悠々と立ち上がって岳人の手を取った。
「俺コーラ飲みたい」
「よしよし、こうたるで」

そして二人は先程鳳と日吉が通った道を仲良く手を繋いで辿って行った。
日吉はそれを茫然と見送る。

『・・・・・向日先輩はコーラが好き・・・?』
日吉は今更情報収集をする事を覚えたのだった。








END










2000HITを踏まれたのはにな様でした。
ありがとうございます!

しかし岳人アイドル・・とするとやっぱり全員?アホになってしまいました・・・・!
日常風景も必要だなとか思って書いたら何の面白みも無い話に・・・;
説明的文章になってしまったのが一番の反省・・・っていつもこんなんだよなぁ・・・
すみません・・

そして何故か日吉をいじめ(まくっ)てしまった・・・・;
〆も日吉ってのは問題ですよねぇ・・・

ちなみに勝手にD1設定です。
宍戸達もついつい手加減して試合をしてこのままD1・・更に青学にも勝ちます。(唯の希望)








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